2015年6月6日土曜日

猟師の肉は腐らない




「猟師の肉は腐らない」小泉武夫 著



ページをめくるたびに、目からウロコでした。

そう遠くない昔、山で暮らす人々が大切に受け継いでいた知恵の数々。
自然の恵みをいただいて暮らすということ。 
生命と生命の駆け引き。

フィクションではあるものの、筆者の実体験や聞き取りをもとに書かれた世界は、なんとも豊かな自然との関わりに満ちていました。 



私たちの暮らしはこの100年で本当に大きく変化したのだなあ、と思い知らされます。

私が生まれたときには、すでにプラスチック製品が身の回りにあふれていました。
スーパーへ行けば季節を問わず食材が揃い、電子レンジであたためるだけのレトルト食品、インスタント食品も。
蛇口をひねれば水も出るし、ボタンを押せばお風呂が沸き、洗濯だってあっという間。
携帯電話でいつでも友人と連絡が取れ、インターネットで世界中の人たちと知り合うこともできます。

100年前はそれらはすべて無かったのですから、
毎日の生活そのものがまったく違う世界だったことでしょう。


「便利さ」や「暮らしの快適さ」はとても有り難くて恩恵に預かっていますが、
それと引き換えに失ったものたちを、失ったことすら気がつかずにやり過ごすのは、なんだか哀しい。


古道具たちは口数少なくて、あまり多くを語ってはくれませんが、
こちらが当時の生活に思いを馳せれば、その姿はいっそう生き生きとして、
色んなことをささやいてくれるような気がします。


現代でも、野菜を作ったり、山で猟をしたり、海で魚を獲ったり、、、
自然と近い場所で仕事をされている方々は、
昔から受け継がれた知恵や思想を、日々の仕事のなかでごく自然に自分のものとされているのだろうなあと思います。


そんな知恵に触れさせていただける機会を大切にして、暮らしていきたいものです。





里の駅でみつけた、広河原「むぎわらぼうし」さんの無農薬イチゴ。

金継ぎされた器と相性ぴったりです。