京都は大原、寂光院への参道沿いにある小さな古道具屋です。 ちょっと昔の器、木製の道具類、古物をリメイクしたものなどを扱います。 不定期営業のため、ブログやSNSでお知らせする営業スケジュールをご確認ください。
2017年7月27日木曜日
粽、笹、森
しばらく前のこと、町内のおじいちゃんに手づくりの粽をいただきました。
大原では10年ほど前まで、「野上がり」と呼ばれる田植え後の祭りで、この粽を作っていたそうです。
地元の神明神社は神主が住民による持ち回り制なので、その時期に神主がまわってきた人は、自宅で粽を100本も(!)作ってお供えしたそうです。
その当時を懐かしみながら、子どもたちのために粽を作ってくれたおじいちゃん。
子どもへの温かい眼差しを常日頃から感じる大原ですが、地域の行事とも結びついたこの風習に込められた想いを感じて、嬉しく思いました。
せっかくの機会なので、おじいちゃんにお願いして粽づくり教室を開いてもらいました。
作業は思っていたよりも重労働。
米粉:もち粉=6:4に、粉砂糖、水を混ぜたものを、ぐいぐいと手に体重をかけながら40分ほどもこねるのです。
参加者たちが交代で挑戦しましたが、思わぬ力仕事でたじたじ。
おじいちゃんの力強い大きな手には敵いませんでした。
こねた生地は、適当な大きさにまとめてから笹で包みます。
笹でつつまれたお餅の香りは、昔から大好きでした。
でも、この笹はもう地元では採れなくなりました。
犯人は、、、愛らしい姿のこの動物。
温暖化や猟師の減少などで鹿が増え、鹿にとって冬の食料である笹が食害で姿を消しています。
笹が無くなった森では、雨で表土が流出して、木の実から芽が出にくくなります。
無事に芽吹いても、鹿がそれを食べてしまうので木が育ちません。
森の変化は、農作物への獣害増加、土砂崩れ、河川の土砂堆積などなど、いろんなかたちで連鎖して私たちの暮らしに直結してくる問題。
大原の里山に暮らしていると、生活の端々で森の変化を感じることがあります。
私に出来ることはなんだろうなあ、、、と考え出すと、答えの見えないぼんやりとした不安の中に思考が停止してしまいます。
50年後、100年後の森は、暮らしは、どうなっていることでしょう。
それでも、古道具屋という職業柄、
ひと昔に丁寧に作られた品々を受け継いでいくことは、ごくささやかなひとつの答えかもしれない。
そう思いながら、今日も獣害柵で囲われた畑を世話して、古道具と向かい合います。