これは、わたしが小さいときに、村の茂兵というおじいさんからきいたお話です。
むかしは、わたしたちの村のちかくの、中山というところに小さなお城があって、中山さまというおとのさまがおられたそうです。
その中山から、すこしはなれた山の中に、「ごんぎつね」というきつねがいました。
ごんは、ひとりぼっちの小ぎつねで、しだのいっぱいしげった森の中に穴をほって住んでいました。
そして、夜でも昼でも、あたりの村へ出ていって、いたずらばかりしました。
<新美南吉・作「ごんぎつね」より>
九谷焼小皿 stock : 6 (2枚にカケ有)
size : 13cm
萩と野菊の陰から駆け出そうとするきつねが描かれた九谷焼。
今からいたずらをしに出かけるところでしょうか。
物語を感じさせてくれる、細やかな絵つけの美しさに惚れ惚れします。
そういえば―
もう15年ほど前のことですが、大文字山にハイキングをして、すっかり帰り道が暗くなってしまった時のこと。
急ぎ足で山道を下る私に、わき水を汲みに来た地元のおばあちゃんが言いました。
「こんな暗い道あるいとったら、キツネが化かしにくるえ。はよかえりんさい」と。
自然や動物と、人間の距離がもっと近かった時代って、そんなに昔のことではないのだなあと感慨深く思ったのでした。
そして、うちの子も今「狸は変身することができる!」と信じています(笑)。