2018年12月24日月曜日

150年前の魔法



もうはるか昔のことで記憶もおぼろげだったりするのですが、学生時代は写真部に入っていました。

夜な夜な暗室に入り浸って、現像液から浮かび上がる像に目を凝らし、露光時間を調整してはまた現像して、、、その繰り返しを延々と空が白むまで。 
酢酸のにおいに包まれて、外とはまったく違う時間の流れの中にいました。


進化し続けるデジカメの便利さに代えられず、ずいぶん前にフィルムカメラは手放してしまったけれど、あの時のあの空気は、今も身体のどこかに残っている気がしています。 



先日、あかつき写房さんから湿板写真を初めて見せてもらった時、そんな昔の記憶が呼び起こされました。
でも日本で湿板写真が使われていたのは、なんと幕末〜明治中期の時期だけ。
呼び起こされるどころか、時代を遡りすぎて、新鮮さに満ち溢れたレトロ感。
  湿板写真については、あかつき写房さんのページに説明があります。>> 湿板写真撮影会のご案内



あかつき写房さんは、日本で一度失われてしまったこの技術をある方から学び、一般向けサービスをはじめられたとのこと。
先日、初めての撮影会があったので、写真を撮ってもらいました。
 (ちなみに、一般向けの撮影サービスをしているスタジオは、まだまだ数少ないと思います。)

カメラ本体も撮影方法も現像方法も、何から何まで目新しくてドキドキしっぱなし。
反転した像がゆっくりと浮かび上がってくる様子も見せていただきました。 
写真の仕上がりも、もちろん大満足。



150年前の魔法を現代に甦らせる不思議さに魅せられた一日でした。 


カメラの前で腕組みしていた坂本龍馬は、何を考えながら立っていたんでしょう。





ドライフラワーを写した湿板写真はツキヒホシの店舗にただいま置かせていただいておりますので、ご興味ある方はぜひ近くで、その独特な陰影や質感をご覧ください。

ちなみに、写真の時計も商品です。
ゆらゆらガラスで文字盤がほんの少し歪んだり、反射する景色も波立って見えます。
存在感たっぷり、家をあたたかく見守ってくれそうな佇まいです。
時計のムーブメントは新しい電池式のものに交換されていますので、ネジを巻く必要はありません。






<2019年1月の営業スケジュール> 11:00~15:30頃


2日、7日、12日


※1月前半の営業予定まで、取り急ぎ確定している日をご案内させていただきました。
上記以外でも、タイミングが整ったときに営業していることもございます。
また、1月後半〜3月上旬はオフシーズンとなりますので、基本的には予約制のオープンとさせていただきます。
ご来店希望の方がいらっしゃいましたら、お気軽にお問い合わせくださいませ。>> 090-5889-1039




















2018年12月18日火曜日

おせちをお重に




一昨日、大原に初雪が降りました。

気がつけばもう年末です。


新年を迎える準備の段取りを、あれもこれも。 

ああ、そわそわします。 



おせちを盛りつけたら映えそうな、陶器のお重がふたつはいりました。
 (写真にはありませんが、後藤塗の丸二段重もあります。)


四段重のほうは3cmほどのカケ修復跡、二段重のほうは1.5cmほどの窯傷があるため、お手頃価格ですよ。 












2018年12月14日金曜日

古道具屋のひとりごと



幸運は続くもので、またまた造りの良い四方盆・煎茶盆が入りました。

材は女桑でしょうか。
木味もよく素直な木目です。


日常使いの御膳としたり、ちょっとしたモノを置いておく用途だったり、来客時の菓子膳に使ったり。
いろんな活躍をしてくれそうな品です。





こういう物を眺めていると、木っていいなあ、としみじみ思います。


桜、松、栗、ケヤキ、トチ、セン、ホオノキ、キハダ、、、
それぞれに木目、色、硬さが違って、表情豊かです。






今の日本では、こうした木製品の原料となる材は少なくなり、貴重なものになりました。 

戦中戦後に木材の需要が増え、同時期に薪・炭から電気を使う生活に変わり、それまで大切に手入れされてきた天然林の多くが皆伐されて、スギ・ヒノキの植林に置き換えられました。

当時の人々が子孫の豊かな生活のためにと投資して始めた植林は今、採算があわないという理由で放置され、台風でなぎ倒され、土砂崩れの要因ともなってしまっています。 



今、古道具として手に入る良質な木製品たちの何割かは、その時代に大量に伐採された天然林の木材から作られたのだろうと思います。 

幸運な木材は、良い職人の手仕事によって素晴らしい品となり、今も美しい姿で出てきます。

私たちが伐りすぎた広葉樹を取り戻すために、しばらくの間は木を育てることに重点を置くならば、、、

新しい木製品を買うよりも、昔につくられた良いものを受け継いで使い続けることは、とても理にかなっていると思うのです。 

しかも、お値段も可愛い。(少なくとも、ツキヒホシでは。)




木皿、お盆、御膳、さまざまな漆器。

アンティークショップや弘法さん天神さんをのぞいてみたら、きっと素敵なものがたくさんあります。
新しく使い続けてくれる持ち主を待っています。 

古道具との出会いは一期一会。

ぜひ、いろんなお店に足を運んでみていただきたいなあと思います。



素晴らしい木製品に巡りあうたびに想う、古道具屋のひとりごと。











 









2018年12月7日金曜日

木地師の仕事




まったく思わぬところで、とっても良い仕入れに出くわすことがあります。

先日も幸運が降って来て、良い品にご縁がありました。 




昔むかし、久多の木地師さんがつくった木皿です。
堂々とした欅の木目が、美しい。


何十年を経ていますが、素地の木が曲がってしまうこともなく、整った形を保っています。
きっと素材は数年がかりで乾燥させてあったものを使い、丁寧な仕事をしたのだろうと思います。
名もなき職人さんが、足で轆轤を回しながら木を削り込んでいく姿が思い浮かぶようです。 


椿皿と呼ばれる形で、高さがあるので食卓にリズムを生み、食材を美しく魅せてくれることでしょう。
表面は赤みがかって乾いた質感です。

個人的にとても好み。
きっと早い者勝ちだろうなあ、、、と密かに思っています。



同じ仕入れで、拭き漆のツヤ感のある菓子皿も入荷しました。

取り皿にもちょうど良さそうな、使い勝手のいいサイズ感です。
漆塗りなので、日々気軽に使って洗えるのがいいですね。




そして、これもまた見つけて嬉しかった無垢材のお盆たち。
漆を塗る前の段階で時がとまったまま、出てきた品です。

少しヤスリをかけて、自家製蜜蝋ワックスを塗りました。
ツヤツヤとした栃の木目が輝き、木の良さが手に伝わってきます。

こちらも、早い者勝ち。
飲食店関係の方々のところへ、次々と嫁いでいます。 



木製品がお好きな方、どうぞお早めにいらしてください。